6.連鎖する偶然

大名行列

ナイキのサングラスの兄ちゃんを筆頭に、入国カードの書き方を教えてくれた彼、道にいる輪タク(?)のおっちゃんがすべて声をかけてくる。「No,No.」と振り払うしぐさをするのだが、ぞろぞろと大名行列みたいについてくる。前から来る輪タクも「のらないか?」と誘ってくる。「歩いて写真撮りたいだけなんだ。」と言うが引く気配はない。サングラスの兄ちゃんがあまりにしつこいので一度輪タクに乗ってしまった。値段交渉中、ひょっとして周りにいる4人×400バーツなのかと確認しようとした。でも言葉が通じず、さっぱりわからない。これはもうダメだと、輪タクを降りながら「No,No.Nooooo!」と振り払った。

ミャンマー

最後に残ったのは、入国カードを教えてくれた彼と輪タクのおっちゃん2人だけ。一人で歩き出すと、彼はずっと「二つのお寺と、二つの市場がある。」「僕はガイドじゃない、安い。」「70バーツでいい。」と繰り返しついてくる。ほっといて自分のペースで歩き、足を止め、写真を撮る。すると彼らも止まって待っていたりしてペースを合わせた。ミャンマーは河一つ挟んだだけで、生活水準がぜんぜん違う。タイと違って歩いている人も多い。そんなこと考えている間にも彼は声をかけてくる。あまりの熱心さに負けて彼に「70バーツ オンリー?」と再確認をして乗せてもらうことにした。

ミャンマーの市場

ミャンマーの市場。通路で写真撮れる雰囲気じゃなかった。狭い通路両脇に魚と肉が冷蔵もされず山積みにされている。屋台の一つで甘い牛乳に米の麺と何か(ゼリー?)が入ったモノを食べる。おいしい、というより薄暗い通路でなんだか必死。容器は水を貯めてある桶ですすいでるだけだった。

次はお寺。彼は「アニ」と両手で何度も挟むしぐさをした。「ワニ?」と手でガシガシやると、そうだ、と笑う。途中で輪タクをこがせてもらったりしながらお寺に向かう。

生ワニかと思ってたら、お寺の形がワニ。

ワニのお寺

ワニのお寺

「古いの?」と聞くと「うん。」と返ってきたが、たぶんそうではないような。ぐるりと回りながら、写真を撮ってもらう。彼が「日本語で『Come on』ってどう言うの?」と聞いてきた。う~ん、「ついて来て。」と伝えると、彼はポケットから、くしゃくしゃの紙を取り出してメモり始める。以前にメモしたのか一杯に字が書かれていた。僕が歩いている前に出て「ツイテキテ。」と何度も言う。それでいいよ、と頷き返した。

国境で出会った

聞くと彼は15歳で、妹と弟がたくさんいて、一家の稼ぎ手らしい。「妹と弟がたくさんいる」と言う部分でこれは来るかな、と身構える。顔には出さず、話を続けていると道行く女性を見て「ミャンマーの女性は綺麗?」とい聞かれた。「綺麗だよ。」と答えると、へへへっと笑う。「『Little 綺麗』は日本語でどういうの?」と返されて少々固まる。無難に「かわいい。」と伝えると「カワイイ、カワイイ。」と何度も反芻していた。

(1時間70バーツなのかも)最後までこの疑問が拭われず、早い目に帰ろうとミャンマーのイミグレーションに戻った。輪タクのおっちゃんと彼に100バーツずつ払う。おっちゃんは(100バーツ札だとおつりがないよ)みたいな困った表情をしたけど「別にいいよ」と言うと喜んでくれた。最後にいっしょに写真を撮って「サンキュー」とお別れをした。

ミャンマーの市場

タイへ渡る橋で、案内してくれた彼(いまさらだけど名前失念)が「いっしょに行ってあげて。」と一人の女性を紹介してくれた。あらっ、日本人なんですか?

Hさんはタイの高校で日本語を教えているそう。諸事情でビザが切れたので、ミャンマーに入国しに来たとのこと。なるほど、一度タイを出るとビザなし30日の滞在期間許可がリセットされるわけなのか。

「タイは何度目なんですか?」
「初めてです。あっ、海外旅行も初めてなんです。」
「メーソートって初めてで来る場所じゃないですよ。」

いやぁ、それって個人的に褒め言葉だなぁ。その後、彼女といっしょに来ている高校の先生を紹介してもらった。

「サワディ・カー。」
「サワディー・かー・・じゃなくて・・クラッ。」

やっと覚えたタイ語のあいさつ。サワディが「おはよう、こんにちは、こんばんは、さようなら」の複数の意味を持ち、最後の「カー」が女性、「クラッ(プ)」が男性がつける丁寧語。最初は反射的に返してしまいよく間違えた。

時間もちょうどお昼だし、いっしょにご飯を食べに行くことになった。W先生(タイの方)も高校で日本語を教えているそうで、日本語で話ができた。食事中に予定を聞かれ「明後日の朝にバンコクで飛行機に乗って日本に帰る、そして明日は特に予定がない」と伝える。すると「これから私たちの学校があるカンペーン・ペッまで来ませんか?」と誘われた。学校のバスで来てるから一緒に乗っていけば無料だし、そこからバンコク行きの夜行バスも出ている、との情報も頂く。何もないメーソートで明日一日どうしようと考えていたところだ。別の場所に行った方がおもしろいに違いない。二つ返事で「連れてってください。」と頼み込んだ。

「お客さんだから。」と先生はおごってくれた。「ビールまで頂いてごちそうさまです。」とお礼をすると、「明日、予定がないなら高校に来てくれませんか?」と言われたのだ。