7.タイでプリクラ

タイの学校へ行く

学校のバンに揺られること2時間あまり。夕方、カンペーン・ペッに到着した。カンペーン・ペッはバンコクの北西358kmにあり、ピン川の横にある街。ちなみに『この川で泳ぐとずっとこの街に住むことになる』という話があるそう。一瞬どうなるのかおもしろそう、と思ったけど残念ながら(?)その機会はなかった。日本の味の素の工場があり、バナナが名物の街である。招待された学校は、中学校と高校が一緒になっていて、生徒数は約3000人。高校1年生と3 年生の授業2つに出ることになった。本番は明日、まずは放課後の学校を案内してくれた。

タイの学校

校庭にいたグループに先生がタイ語で何か言うと「コンニチハー。」と挨拶してくれた。「こんにちは。」と返すと、「おおーっ」と声が校舎に響いた。とたんに囲まれる。一人の生徒が「ワタシノナマエハ」と自己紹介を始めるとみんながやり始めた。言われた名前を繰り返す。「アイシテルー。」と言って逃げていく女の子。田舎町なので日本人はあまりこない上、男の人は珍しいらしい。一通り自己紹介が終わった後、先生に連れられて、職員室で「サワディ・クラッ」と挨拶をした。

タイの学校

先生は用事があるそうなので、その間にさっきあいさつした女の子達にカンペーン・ペッの遺跡を案内してもらう。モーターサイクルに2人乗りして学校を出た。遺跡をみんなで歩いていると「ここはお化けがでるんだよー。こわい?」と彼女たち。言われてみると、崩れかけのレンガ、暗くなると何か出そうな雰囲気だ。「こわい、こわい。見たことある?」と聞くと彼女たちはブンブンと顔を横に振った。

遺跡を見た後に、先生とHさんとで晩御飯を食べに行く。「食べたいものは?」と聞かれて、なんだか変だけど「タイ料理っぽいのを食べたい。」とリクエストする。ジンギスカン鍋の凹凸を大きくした感じの鍋で、中心で焼肉、縁にダシを入れて鍋が同時にできる料理をつつく。ビールを飲みながら「高校生元気ですね。」と話したら「ヂープされないようにね。」と二人していたずらっぽく笑われた。

カンペーン・ペッの遺跡

「ヂープ?」(発音がちょっとはっきりしない「チープ」かも)Hさんに意味を尋ねると「日本語にはないですね~。」とまず一言。追っかけるとひょいっと逃げて、でもそこは手の届かないところじゃないってパターンかな?話を聞いていくと「友達以上恋人未満、かなり近くて親しいけど恋人にはなりえない」ぐらいの関係だと解釈しちゃう。焼肉が終わった後、先生曰く、Hさんをヂープしようとする人がいるバーに行き、遅くまでカシューナッツをつまみビールを飲みながら生演奏を聴いた。

学校の中で

朝起きて何度もトイレに行く。まず、高校3年生で40人ぐらいのクラス。日本のイメージで、前に出て一人でいろいろ話すのかなと思っていたら、先生は生徒達に「二つのグループに分かれて。」と言った。教室の椅子とテーブルが分けられる。片方のグループを受け持ち、期待に溢れた目に囲まれた。話すだけって苦手なんだけど。先生に「何か書くものありますか?」と画用紙とペンを出してもらう。学生のときノートに落書きしていた地図がこんなところで役に立つとは。すらすらと日本地図を描いていろいろ説明。「僕の住んでいるところには7-11がありません。(タイでセブンイレブンはメジャー)」と言うと「ええーっ、田舎だー、田舎。」と騒がれた。

ビールの広告

2グループとも会話が終わったら「日本の歌を歌って。」とリクエストが出る。「歌苦手なんですよ」と返すと「それじゃあ国歌を歌って。」となって後戻りできない展開に。覚悟を決めて「きーみーがぁーあーよーぉわーぁ。」とひとつ歌った。日本人のHさんにも「すごいっ。」と言われる。日本では高校出ると国歌を歌うことなんてないものなぁ。歌詞はちょっと端折り気味であやしかった。

学校

学校が終わってからは、お祭りがあるというので1年生といっしょに行くことに。屋台で料理を買って、みんなでテーブルを囲む。「からくないですか?」「おいしい?おいしい?」と何度も聞かれる。帰りにみんなでプリクラを撮りに寄った。実はこれが人生初のプリクラだったりする。裏側にみんなの名前を書いてもらう。僕の名前もみんなのに書く。書き込み一杯のプリクラは、今これを書いている横にある。

みんなで写真

深夜のバスターミナル。わざわざ送ってくださった先生と握手をしながら「また、来ます。」と思わず口から出た。「また、来て下さい。」と先生。恥ずかしながら僕の目は潤んでいたはずだ。バンコク行きの夜行バスに乗り込む。席は通路側だったけどバスが出発する時、先生の車が見えないかと外を覗き込んだ。窓側に座っていたおっちゃんに「何が見えるんだ。」と不思議そうな顔をされる。車に乗り込んでいた先生がちらっと見え、バスはターミナルを離れた。

こうして、初の海外一人旅は終わった。