No.3 降りかかる災厄

一時間あたりの料金か

「は、はっぴゃくバーツ?」

身振り手振りから推測すると、「1時間200バーツだ。4時間かかったから800バーツ出せ。」ということらしい。今だったら最初に見せたガイドブックのコピーをひったくって「これは1日200~300バーツ」って書いてあるんだよっ、と説教するんだろうけど、その時点ではタイに渡って15時間ほどでバーツ感覚がなかった。つい日本円で計算してしまって、「2,800円ぐらいか、イロイロしてくれたから別にいいかな。」とサイフから1,000バーツ札を出してしまったのだ。

アユタヤーにあったゴマっぽい植物

「バスのチケットを買ってあげるから。」すごい勢いで1,000バーツ札を取り、カウンターに向かうおばさん。あっけに取られてる僕の前で、スコータイ行きのチケットが買われ、お釣りの内800バーツが奪われる。握手をして飛び切りの笑顔で「またきてねー。」を繰り返し、バイバイをしてトゥクトゥクは去っていった。ターミナルに一人残される。「自転車でこれだけ回るのは無理だった、ありがとう。」つい10分前まで言ってたセリフがひどくバカげたことに思えた。

初任給は6,000バーツ/月

後で聞くところによると、学校の先生の初任給が一ヶ月6,000バーツらしい。「一日で800バーツも稼いだなんて、絶対夜は宴会してますよ。」「いや、一日じゃなくて半日っす。」「うわっ。」という会話が繰り広げられたのであった。どこでもメジャーな観光地はキライじゃ。

花

唐突に静かになったターミナルの待合所の中で「これホントにスコータイ行きのチケットか?大体時間になってもバス来ないんですけど。」明るいうちにスコータイに行けるよ、と言っていたオババのセリフが思い出される。恐る恐る係りの人に「いつバスは来ますか?」と尋ねると「遅れてる。」と一言。800バーツが悔しくて地団太を踏みながらバスを待ったのでありました。

どこかのハイウェイ

田舎町に止まる。次バスが止まったらここはどこか絶対聞くぞ、と心に決めていて、前席の人に「すみません。」と声をかけた。「スコータイ?」と言うと首を振る彼。よかった(それ以上何も言わないってことはスコータイは通り過ぎてはいないのだな。後に乗っている白人女性も同じ目的地だろう。行き過ぎててもどこか大きな街につくから大丈夫、大丈夫。)と無理やり焦る心を落ち着かす。それっぽい大きなバスターミナルに着いた時、前席の彼は「スコータイ。」と教えてくれた。

客引きの嵐

バスから、鴨(日本人)がネギ(バックパック)を背負って降りると、群がってくる客引き達。「泊まる場所は決まってるのか?」「ターミナルから街まで 4km離れてる、俺のタクシーに乗れ。」適当に断っていたんだけど、最後までゲストハウスの写真を見せて、しつこく言ってくる人に「(えーい、なるようになれ)100バーツ、オンリー?」と強く確認した後、「OK.」と交渉成立した。

ゲストハウス周辺

4キロもないじゃないか。せいぜい1キロ半ってところか。街に着くと路地に入った。ちょっとイヤなんですけど、と感じ始めたころトロピカルなゲストハウスの前に止まる。

ゲストハウス周辺

部屋を見せてもらい、宿に泊まる手続きをしていると、宿泊者リストの中に一人の日本人がいた。結局宿を出るまで顔を合わすことはなかったが、40代ぐらいのおっさんだった。なぜ直接会ってないのにわかるかというと、独り言が多かったのだ。シャワールームの壁越し、隣の部屋と、ぶつぶつ聞きなれた日本語が耳に入ってきた。彼は「さぁ、いざ旅立ちのとき。」と独り言を発して一足早くチェックアウトしていった。やー、なんか怖いなぁ、あーなりたくはない。しかしこの3日後、彼と似たような状態になるとは、この時少しも考えてもいなかったのである。

ゲストハウス周辺の部屋