5.歩いて越える国境

メーソートへ向かう

「あっちだ。」指をさして、バスが来る場所を教えてくれた。でもその先は微妙にターミナル内から外れている。別の人にも聞いたがこれもまた、微妙に違う。バスが入れるような場所はないし、ちょっとずれたんだろうとターミナルで待っていたが、出発時間が近づいても「メーソート」と書いたバスは来なかった。近くにいたバスの運ちゃんに聞いてみると、道向こうの店の前に止まっている一台のバンを指差し、「ミニバス。」と言った。いつまで経っても来ないはずだ。あのバンはずっとあそこにあったのだから。

メーソート行きのバス

屋台で腹ごしらえをしてミニバスに乗り込む。ミニバスは、町を抜けしばらく平坦地を走っていたが本格的な山道に入る。日本なら山を回りながら傾斜を緩くして道を作ってるけど、こちらは最短距離を進む。道が広いためかスピードを落とさずバスは走った。アップダウンでたまに揺れる車の中で、うとうとしていた。

メーソートへの風景

メーソートに着き、ゲストハウスにチェックインする。ここには日本語対応のインターネット(日本語が読めるだけ)があり、旅に出て6日目にして初めて親に「ima [Mae Sot] ni imasu.genkini yattemasu.」とメールを送った。

メーソートのゲストハウス

帰ってから聞いた話。「メーソート」というのは家にある地図には載っていなかった。父がネットで検索してみると「国境近くの町で麻薬と犯罪がうんぬん・・・」と書いてあったそうで両親は眠れぬ日々をすごしていたらしい。行ったものとしては眉唾物でのんびりした何もない町でした。

ミャンマーへの国境

次の日、ミャンマーとの国境に向かう。国境行きのソンテウ(乗合バス)は7~8人集まったら出発するらしい。一番に着いちゃったのでのんびり待つ。運ちゃんは荷物を持って通りかかる人に声をかけていた。行きたい方向が同じなら運ちゃんに言えば途中で降ろしてくれるから別にいいのだ。顔に化粧をしたミャンマー人っぽい人も乗ってきて、のんびりと人数が集まり国境へとスタートした。

ナイトバザール

イミグレーションでタイ出国のスタンプを押してもらう。タイとミャンマーの国境モエイ川を渡るとミャンマーだ。初めて自分の足で渡る国境。上から覗いたモエイ川は茶色く濁っていて透明度はゼロに近い。一歩一歩踏みしめて、タイとミャンマーを交互に見渡しながら橋を歩いた。

客引きが始まる

と言いたいところだけど、タイのイミグレーション出たとたん、どう見てもまわりから浮いているナイキのサングラスをかけた兄ちゃんに捕まっていた。「どこからきた?」「向こうに○○町、あっちに○○町がある。」などなど会話は止まらない。「へぇ~」と適当に相槌を打っていると、ペースにはめられて気づくと橋の半分を過ぎてしまった。そのあたりで彼は「400バーツで案内するぞ。」と言い始めた。内心「来たなっ。」と思いにこやかに「I like walking.」と応戦する。しかし、彼は「おーぅ。」と笑いながらオーバーリアクションするが「遠いからタクシーのほうがいい。」と言いつづける。ミャンマーを歩きたいだけだからガイドはいらないと言うが引き下がらない。そんなやりとりをしているとミャンマー側のイミグレーションに到着した。さすがに部屋の中には入ってこなかった。

入国料として500バーツを払い(10ドルでも可)パスポートを預ける。まだ入国カードは書き慣れない。この欄に何書けばよかったけ?と、おたおたしていると、部屋の中にいた12歳ぐらいの男の子が「コンニチワ。」とたどたどしい日本語で話しかけてきた。ここは「ジャパン」こっちは「シゴト」と教えてもらう。

彼の助けで入国カードは無事受理された。預けたパスポートの引換券を貰って、イミグレーションを出る。ミャンマーだっ。しかし、目の前に広がっていたのは客引きの荒海だった。